終わりそうで終わらない新型コロナウイルス感染症対策や円安によるインフレや原材料の高騰、建設業の過去からの課題である少子高齢化による人材確保難や人件費の高騰など建設業界を取り巻く課題は山積みです。

これらの課題を各事業者は1つずつ解決して行かなければ、企業として生き残ることが難しくなってきます。中でも建設業は受注数の減少など景気の影響を受けやすい業種なので、資金調達などの課題を1つずつ解決していくことで継続的な事業活動を目指せます。

そこで活用したいのが補助金や助成金です。今回の記事では、建設業者なら活用すべき助成金・補助金を5つご紹介するので、参考にしてみてください。

1 助成金・補助金を活用すべき理由

助成金・補助金を活用すべき理由

助成金や補助金を活用する目的は、自社の経営課題や問題の解消にあります。経営課題や問題は認識している事業者は多いですが、実際に解決・解消に動く企業は多くありません。

経営課題や問題の解消は簡単ではなく、何度もチャレンジしてトライアンドエラーを繰り返して解決に至るものが多いからです。場合によっては、過去に解消に向けて動いたけれども解消までに至らず、苦い経験を持っている事業者などもいます。

しかし、助成金や補助金を活用することで予算の問題は解消できるケースもあります。自社の経営課題や問題の解決に沿った助成金や補助金を活用して、コスト面での問題をカバーしながら、将来的に競争力となるような経営課題の克服や問題解決をしていくことが重要になります。

●活用できる助成金や補助金を探すことで経営課題も探せる

助成金や補助金は、国や自治体が進めるべき、もしくは進めたい事項について事業者の行動を即す目的で制度化されているものが多数あります。

例えば、事業者の数を維持したいという国の狙いによって創業や開業や起業などには助成金や補助金が複数用意されています。

つまり、自社で受けられる助成金や補助金の制度を探すということは自社を強化できる課題を探すことに近い作業になります。

●書類作成も現状把握に役に立つ

助成金や補助金を受けようとすると申請書や事業計画書などの提出が求められます。申請書を作成することで、助成金や補助金の対象となる事象がどのように今後の経営や事業に役立てていくのかということを考える機会を提供します。

同様に申請時に提出する事業計画書を作成することで、申請対象が経営に与える影響を具体的な数値で把握することができ、費用対効果や利益の改善などを具体的に計画として落とし込むことができます。

また、助成金や補助金が降りる書類を作成できるということも一定の信用にもなります。

2 建設業者が活用すべき助成金・補助金5選

建設業者が活用すべき助成金・補助金5選

建設業者だから活用できる助成金には、人材不足に悩む建設業界で若年層や女性の働き手を増やすための助成金3つを紹介します。また、建設業界以外でも活用できる補助金や助成金の中から、多くの事業者が活用している一般的な補助金や助成金についても2つ紹介します。

2−1 トライアル雇用

トライアル雇用

トライアル雇用は、実務経験が不足しているなどの理由から就職することが困難となる求職者について原則3ヶ月間の試行雇用を促進する制度になります。

建設業についても、トライアル雇用『若年・女性建設労働者 トライアルコース』が活用できます。35歳未満の若年者と女性など一定の条件に合致した雇用について、4万円/月×3ヶ月のトライアル雇用助成金の上乗せになります。

2−2 人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は、厚生労働省が進める魅力ある職場づくりのために労働環境の向上などを図る事業主などを支援する制度になります。魅力のある雇用創出をすることで人材の確保と定着を目的としています。

人材確保等支援助成金のコースは全部で9コースあり、その中で建設分野に関わるコースが以下の3つになります。各コースの詳細は厚生労働省Webサイト『人材確保等支援助成金のご案内』で確認できます。

①建設キャリアアップシステム等普及促進コース

今後の建設業を担う若年就業者の建設業への入職や定着を促すための建設キャリアアップシステムなどの普及を進める建設事業者への助成になります。

助成金額は、建設事業主団体(中小建設事業主団体)は支給対象経費の2/3となります。また、中小建設事業主団体以外の建設事業主団体の場合には支給対象経費の1/2が上限となります。

②若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース

若年者や女性労働者の入職や定着を図る目的を事業としておこなった建設事業主や団体などへの助成金になります。

助成金額は、中小建設事業主に対して支給対象経費の3/5が上限になります。中小建設事業主以外の建設事業主の場合には、9/20が上限になります。

③作業員宿舎等設置助成コース

被災地での作業員宿舎や施設などを貸借した中小建設事業主、自ら施工管理する建設工事現場に女性専用の作業員施設を貸借した中小元方建設事業主などへの助成金になります。

助成金は1/2〜3/5まで対象によって上限が異なってきます。

2−3 人材開発支援助成金

人材開発支援助成金

建設業界で働く就労者について、職業訓練に必要な費用の一部負担をしてくれる人材開発支援助成金には以下の2つのコースがあります。

①建設労働者認定訓練コース

建設関連の訓練の中で認定された職業訓練もしくは指導員訓練を実施した場合に、賃金助成(3,800円/人日)と経費助成(1/6の賃金)を助成します。

②建設労働者技能学習コース

若年者などの育成や熟練技能の維持・向上を目的とした技能実習を実施した場合、中小建設事業者は賃金助成(8,550円/人日)とを経費助成(3/4の経費)を助成します。

2−4 IT導入補助金

IT導入補助金

建設業の職場環境を改善するために必要とされているものの1つがIT化になります。このIT化のための設備投資に幅広い補助が受けられる制度が『IT導入補助金』になります。

IT導入補助金には、通常枠(A・B類型)とセキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠の大きく3つの枠があります。それぞれの枠について、条件などはあるもののパソコンなどの単体購入から補助の対象となるなど使い勝手が良い補助金制度になります。

2−5 小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓などの取り組みや業務生産性改善などの取り組みを支援する制度です。

通常枠(上限50万円)と特別枠(上限200万円)の2つの枠があり、補助率は2/3になります。

3 まとめ

中小企業や個人事業主を支援する助成金や補助金の制度

今回ご紹介した助成金や補助金の制度は複数ある中の一部です。紹介した制度以外にも、中小企業や個人事業主を支援する助成金や補助金の制度は多くあります。

例えば、これから発生するインボイス制度への対応や賃上げへの対応などを行うための設備投資を支援する『ものづくり補助金』や生産性向上のための取り組みを支援する『業務改善助成金』などです。

制度は毎年その内容を一部更新しながら継続されるものも多いため、常に助成金や補助金の情報をチェックし、必要な支援を受けられるようにすることが大切です。