国や地方自治体から支給される助成金や補助金には様々な目的や種類があり、上手に活用すれば、事業や生活の安定を図るのに役立ちます。しかし、そのように便利な制度であるがゆえに、虚偽や架空の内容に基づいて申請を行う、いわゆる不正受給の例が後を絶ちません。

そこで今回の記事では、助成金・補助金を不正受給した場合のペナルティの内容や気をつけたいポイントなどを解説しています。助成金・補助金の活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

1 助成金・補助金を不正受給すると

助成金・補助金を不正受給すると

はじめに、助成金・補助金を不正受給すると、どのようなペナルティが用意されているのかを確認してみましょう。

1-1 不正受給とは

助成金・補助金の不正受給とは、本来であれば助成金・補助金の支給対象にならないにもかかわらず、不正な手段により申請を行うことです。この場合の不正な手段とは、事実とは異なる内容に基づいて申請を行うことであり、例えば事実通りに申告しなかったり、数字や金額を書き変えたり、証拠書類を捏造・改変するなどにより事実と異なる内容の申請を行うことです。

不正受給は、実際にお金を受け取っているかどうかは関係なく、事実と異なる内容の申請を行うことで不正受給となります。

1-2 不正受給した場合のペナルティ

助成金・補助金を不正受給すると、様々なペナルティが課されてしまいます。例えば、厚生労働省所管の雇用関係の助成金で不正受給を行った場合、以下の通りです。

①受給額の全額返還+不正受給額の20%相当額+延滞金の請求 受給額の全額返還に加え、違約金として不正受給額の20%相当額および延滞金が課されます。
②事業所名の公表 都道府県労働局により、不正受給した事業所名や所在地、不正に関与していた社会保険労務士などの代理人名などが公表されます。
③5年間の不支給措置 不正受給があった時から5年間は、雇用関係の助成金を受けることができなくなります。
④悪質な場合は刑事告発 悪質な場合は、刑法第246条の詐欺罪等で告発されてしまいます。

次に補助金の場合ですが、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)に、不正受給の場合のペナルティが定められています。それによると、補助金交付決定後に不正が発覚した場合は、交付決定が取り消されます。

また、補助金が交付された後に不正が発覚した場合は、受給額の返還+延滞金が課されます。さらに、「5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれを併科する」との規定により、罰則が科される可能性もあります。

以上のように、助成金、補助金ともに、不正受給した場合のペナルティが厳しく定められています。

2 助成金・補助金の不正自給をしないために注意したいポイント

助成金・補助金の不正自給をしないために注意したいポイント

それでは、助成金・補助金を申請する前に、どのような点に気をつけたらよいかを見ていきましょう。

2-1 怪しい勧誘に応じない

1つ目は、怪しい勧誘に応じないことです。助成金や補助金では、その申請手続を代行する業者がいます。法規に従ってしっかりとした手続きを行う業者もいますが、中には、言葉巧みに勧誘する怪しい業者もいます。「当方に任せていただければ、必ず採択してもらえます」「他の業者より多くの金額を貰えるノウハウがあります」などと勧誘し、申請手続きを任せていたら、知らない間にいい加減な内容の申請を行ってしまう業者もいるのです。

このような怪しい業者は、経営アドバイザーや経営コンサルタントなどと名乗っていますが、正式な国家資格を持っていないケースがほとんどです。助成金・補助金では、厚生労働省が所管する助成金は社会保険労務士でなければ申請代行ができないなど、法律で申請代行ができる資格が定められている場合もあります。

怪しい業者に手続きを任せたばかりに不正受給になってしまい、後で責任を問われたなどとならないよう、怪しい勧誘には十分に気をつける必要があります。

2-2 軽い気持ちで不正な申請をしない

不正受給は、悪気がなかったでは済まされません。「手続きを代行業者に任せていたので、不正受給になるとの認識がなかった」「書類作成をアルバイトにやらせていたので、誤りに気がつかなかった」などの言い訳は通用しないため、第三者に手伝ってもらう場合でも、申請書類の最終チェックは申請者本人が行うことであり、その結果は本人が責任を負うことになります。

また、「不正受給になったのは悪気がなかった」「故意はなかった」などと主張しても、誤った内容(虚偽の内容)に基づく申請がされていれば、不正受給になってしまいます。

2-3 申請内容に誤りがないか十分に確認する

助成金・補助金を申請する際は、申請内容に誤りがないか十分に確認することが重要です。

助成金・補助金には、支給要件に適合していれば一律の金額を受給できるもののほか、基礎的な数値から申請額を導き出すものがあります。

このため、①支給要件に適合すれば一律の金額を受給できる助成金・補助金では、支給要件の適否を再チェックする②基礎的な数値から申請額を導き出す助成金・補助金では、基礎的な数値に誤りがないか再チェックすることが大切です。

例えば、雇用調整助成金では、経済上の理由により事業活動を縮小せざるを得ない事業主が、労働者の雇用を維持するため休業・教育訓練などの雇用調整を実施する場合に、休業手当の1/2、教育訓練を実施した場合の賃金相当額の1/2を助成するとなっていることから、休業や教育訓練の実績に誤りがないか、賃金台帳、出勤簿、タイムカード、勤務カレンダー、シフト表などの台帳類に立ち返り確認することが求められます。

2-4 実績報告は正直に

補助金では、補助対象事業実施後の実績報告を正直に行うことが大切です。補助金の交付手続きは、①申請者の交付申請(事業計画提出)→②行政庁の審査→③行政庁の交付決定→④申請者の補助対象事業実施→⑤申請者の実績報告→⑥行政庁の交付確定・振込の流れで進みます。

このうち、⑤申請者の実績報告は、補助対象事業が当初提出した事業計画どおりに実施され、補助金の支給要件を満たしたかどうかについて報告するものです。すなわち、補助金の交付申請書は既に提出していても、この実績報告書が実質的な交付申請になります。

事業計画に従って事業が実施されていないにもかかわらず、事業計画通りに行ったと虚偽の報告を行うと、不正受給となってしまいます。実績報告では、事実を正直に申告する必要があります。

2-5 調査・検査に備える

立入調査に備えることも重要なポイントです。助成金や補助金を交付する行政庁は、受給した事業所に立入調査を行う権限を持っています。したがって、事業所は、いつ立入調査を受けても大丈夫な体制を作っておく必要があります。そのためには、助成金や補助金の申請内容を裏付ける書類を整備しておくことが大切です。

例えば、①厚生労働省所管の助成金は、雇用の安定や雇用の拡大を図る事業主を支援するものが多いことから、就業規則・労使協定・出勤簿・シフト表・タイムカード・賃金台帳など雇用・労働関係の実績が分かる帳簿類、②経済産業省所管の補助金は、創業や新規設備投資を行う事業主を支援するものが多いことから、事業計画書・事業スケジュール・仕様書・契約書・見積書など事業計画の裏付けとなる書類、③その他、売上額や必要経費が関係する助成金・補助金では、売上台帳・仕入台帳・賃金台帳・現金出納簿・請求書・領収書などの帳簿や証拠書類などを整備しておく必要があります。

また、助成金や補助金の交付があった場合は、会計検査院の検査対象になります。助成金・補助金を受給した事業者も調査対象となるため、会計帳簿や証拠書類を整理・保管しておく必要があります。

3 まとめ

不正受給とならないよう申請前に気をつけるポイント

助成金、補助金ともに、不正受給した場合のペナルティが厳しく定められています。不正受給とならないよう申請前に気をつけるポイントとして、①怪しい勧誘に応じない、②悪気がなかったでは済まされないことを認識する、③申請内容に誤りがないか十分に確認する、④実績報告は正直に申告する、⑤調査・検査に備えることが重要です。