子育てには多くのお金がかかります。しかしそんな負担を軽減するために国や自治体が設定している補助制度も多数存在します。ここでは、そんな子育て世帯向けの補助制度のうち、最も基本とも言える「児童手当」のシステムについて詳しく紹介していきます。
目次
1:児童手当とは
児童手当は0歳から中学校卒業までの児童を養育している方に市町村から支給される手当です。支給される金額は子供の年齢や親の所得等により異なりますが、自治体による差はありません。では早速、制度の概要について見ていきましょう。
1.1子どもの年齢と支給される金額
児童手当は、子どもの年齢によって支給される金額が異なります。
- ・3歳未満・・・一律15,000円/月
- ・3歳以上小学校修了前・・・10,000円/月(第3子以降は15,000円/月)
- ・中学生・・・一律10,000円/月
となっています。
例えば、4月生まれの第1子で満額受給できる場合は以下の通り支給されます。
- ■0〜2歳 15,000円×12ヶ月×3年=540,000円
- ■3歳〜小学生 10,000円×12ヶ月×9年=1,080,000円
- ■中学生 10,000円×12ヶ月×3年=360,000円
0歳~中学校を卒業するまで、合計で1,980,000円が支給されることになります。まとまった金額で見るとかなり大きな額であることがわかります。
1.2支給されるタイミング
児童手当は毎月支給されるのではなく、毎年6月、10月、2月にそれぞれの前月までの分の手当が支給されます。
「月々の生活費にあてたい」といった使い方を求める方も多くいらっしゃるかもしれませんが、どこの自治体でも4カ月がまとめて振り込まれる仕組みになっており、例えば2,3,4,5月分が6月に支給され、6.7.8.9月分が10月に支給され…といったイメージです。
子どもが生まれたときや中学校を卒業したときのみ4ヶ月分ではない場合もありますが、基本はまとまった金額が支給されます。
1.3受取人
児童手当は原則市区町村から、個々の指定の振込口座に振り込まれます。この時、振込先口座の名義は受給者(保護者)でなくてはいけません。将来に備え、子ども名義の口座に直接振り込んで貯金したいという方も少なくないとは思うのですが、残念ながらそういった方法を選択することはできません。
また、子どもが2人以上いても指定できる口座は1つです。口座を分けたり、父母で分けて受給したりすることはできませんので注意しましょう。
1.4所得による支給額の違い
所得が比較的高い方は制限額や上限額に注意が必要です。児童手当は、養育する方の所得が所得制限額を超える場合は一律5,000円に減額されます。
さらに、令和4年10月支給分からは所得上限額を超えると児童手当が支給されないといった条件に変更となりました。
所得制限額・所得上限額は手当を受け取る方の1年間の所得で判断されます。年単位で都度判断されるようになっており、例えば、ある年に所得制限額を上回ったら、翌年1年間の児童手当が月額5,000円に減額されます。ところがさらに次の年にもし、所得制限額を下回った場合には、その翌年1年間は通常の支給額の支給を受けられるといった仕組みです。
1.5所得制限額と所得上限額のまとめ
所得制限額は扶養親族等の人数で異なりますので、自分の制限額・上限額を確認しましょう。
世帯年収ではなく、世帯の中で最も所得の高い人の所得額を基準に判断される点を覚えておきましょう。
所得制限額・所得上限額と扶養人数の関係を表にまとめるとこのようになります。
扶養親族等の数 (児童 + 年収103万円以下の配偶者等) |
所得制限限度額 | 所得上限限度額 | ||
---|---|---|---|---|
所得額 (万円) |
収入額の目安 (万円) |
所得額 (万円) |
収入額の目安 (万円) |
|
0人 (前年末に児童が生まれていない場合 等) | 622 | 833.3 | 858 | 1071 |
1人 | 660 | 875.6 | 896 | 1124 |
2人 | 698 | 917.8 | 934 | 1162 |
3人 | 736 | 960 | 972 | 1200 |
4人 | 774 | 1002 | 1010 | 1238 |
5人 | 812 | 1040 | 1048 | 1276 |
※2023年1月現在の情報
収入額は収入が「給与のみ」の場合の目安です。所得控除の額等で最終的な所得額は変化しますので、源泉徴収票等でご自分の所得を確認してください。
また、児童の数は高校卒業に相当する年齢(18 歳の誕生日後の最初の 3 月 31 日まで)までの子どもが何人いるかを数えます。自分の子どもでも大学生等は人数に含まれませんので、多子世帯の方は注意が必要です。
2:必要な申請手続き
児童手当を受給するためには子どもが生まれたときの申請はもちろん、住所が変わったとき等にも届出が必要となります。この提出が遅れるとその月分の手当を受給できなくなりますので、忘れずに役所にて手続きを行いましょう。では、手続きの詳細について確認していきます。
2.1生まれたときに必要な手続き
子どもが生まれたときや他の市区町村に引っ越したときは発生日から15日以内に「認定請求」の手続きが必要です。
子どもが生まれたときに出す「出生届」は生まれた市区町村、本籍地、現住所のいずれかで受け付けてもらえますが、「認定請求」の申請先は「現住所の市区町村」となりますので、申請先を間違えないよう注意しましょう。
出生届も現住所の市区町村に提出すると手間が少なくて済みます。
2.2申請の15日特例
原則として認定請求や届出が提出された月の翌月分から児童手当の支給が開始されます。
しかし、月末に子どもが生まれたり引っ越しをしたりすると提出が間に合いませんので、このような場合は発生日の翌日から15日以内に申請をすれば提出した月の分から支給が開始されるよう配慮されています。
2.3毎年6月の現況届
児童手当を継続的に受給するためには“毎年6月に現況届を提出する”というのが原則でした。しかしこれについては、令和4年6月から提出不要となり、煩わしい更新作業が無くなりました。とはいえ、個々の状況によっては市区町村の判断で現況届の提出を求められることもあるので、お住まいの市区町村に取り扱いを確認しましょう。
2.4届出が必要なケース
以下のケースに該当する場合は、お住まいの市区町村に別途届出が必要になります。発生日の翌日から15日以内に届出をしましょう。
- ・支給対象となる児童がいなくなった(児童を養育しなくなった等)
- ・住所が変わったとき(海外への転出を含む)
- ・受給者や配偶者、児童の氏名が変わったとき
- ・離婚や死別、再婚したとき
- ・転職、退職等で受給者の加入する年金が変わったとき(公務員になったときを含む)
- ・海外に住んでいる父母から「父母指定者」の指定を受けるとき
特に、引越や離婚等により生活環境が大きく変わるタイミングは忙しくなりますので、手続きが遅れないよう注意しましょう。
2.5公務員の場合
公務員の場合は、市町村からの振込ではなく、勤務先から児童手当が支給されますので、申請等の提出先も役所の窓口ではなく職場となっている事が通常一般的です。
特に
- ・公務員になったとき
- ・公務員でなくなったとき
- ・勤務先に変更があるとき
上記のタイミングには、勤務先に加えてお住まいの市区町村にも15日以内に届出・申請が必要ですから忘れずに手続きを行いましょう。
3:親と子が離れて暮らす際の手続き
児童手当の基本概要がわかったところで、ここからはイレギュラーなケースについても確認していきましょう。
3.1受給者の単身赴任
児童手当を受給している親が単身赴任で別の市区町村に引越しを行う場合は、赴任先の住所の市区町村から自動手当が支給されます。
まずはお住まいの市区町村に転出届と一緒に「児童手当・特例給付受給事由消滅届」を提出します。
そして赴任先の市区町村に転入届を提出した後、児童手当の申請手続きを行いましょう。市区町村によっては、別居している子供の住民票や子どものマイナンバー確認書類も提出を求められるケースがありますので、予め市区町村に必要書類を確認するようにしてください。
※赴任期間が短い等、住民票を移さない場合は児童手当に関する届出も不要になります。
3.2海外留学
原則として、対象児童が海外に住んでいる場合は、児童手当は支給されません。
ただし、留学を理由に海外に住んでいて
- ・海外留学前に3年以上国内に住所があった
- ・教育を受けるためであり、父母と同居していない
- ・日本に住まなくなって3年以内
といった条件を満たせば例外として児童手当が支給されます。詳細はお住まいの自治体にて確認するようにしてください。
3.3両親の海外赴任
子どもを祖父母等に預けて両親が海外赴任する場合は、子どもを養育する人を「父母指定者」に指定することで、指定された方が児童手当を受給することができます。なんらかの理由で両親共に子供と住民票を別にするようなケースでは、「父母指定者」の設定を忘れずに行いましょう。尚、住所が海外にある方は受給することができませんのでご注意ください。
4:まとめ
いかがでしたでしょうか。「児童手当」は、中学校卒業までの子どもを対象に、保護者が継続的に受給できる手当です。生活環境が変わる際には忘れずに届出を行い、確実に受給しましょう。
この他にも、国が制度化しているような出産・育児に関連する補助金・助成金の制度は多数あります。それぞれに制度を理解してしっかりお金のサポートをしてもらえれば、経済的にも安心して子育てに臨めるようになるでしょう。