厚生労働省が管轄する助成金制度の「人材開発支援助成金」をご存じでしょうか。
「人材開発支援助成金」は企業向けの助成金で、事業者等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練等を実施する際に活用する助成金です。この制度には様々なコースが存在しますが、その中でも特に今注目を集めている「建設労働者技能実習コース」について、詳しく紹介していきます。
目次
1:人材開発支援助成金
平成28年までは「キャリア形成促進助成金」という名前で実施されていましたが、平成29年からは「人材開発支援助成金」という名称に変わり、多くの企業で活用されて続けています。まずはこの人材開発支援助成金の基本情報について紹介します。
1.1概要
「人材開発支援助成金」は、労働者がスキルアップなどのために職務に関連した専門的な知識などを習得するための職業訓練を実施した際に、その訓練の経費や訓練中の賃金の一部を助成金として企業が受け取る事が出来る制度です。
企業が人材を育成し、労働者のキャリア形成を促進するように支援する為の助成金として多く活用されています。いくつかのコースに分かれており、対象となる企業や助成金の金額等、助成内容が異なります。
1.2コース
人材開発支援助成金には、以下の9コースがあります。(2023年1月現在)
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 特別育成訓練コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
これら9コースはどれも従業員に対する人材育成に使用することができますが、その中でも「⑧の建設労働者技能実習コース」は建設労務者が技能向上の為に有給で実習を受けることができる話題の訓練です。特にスキルアップが見込める制度として注目を集めています。ではここからは、「建設労働者技能実習コース」の魅力について見ていきましょう。
2:人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース
「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」は、令和4年3月31日までは「人材確保等支援助成金(雇用管理制度女性コース、建設分野)という名称で設定されていました。建設事業主や建設労働者の雇用の改善及び建設労働者の技能の向上をはかるための取り組みをしやすくする助成金です。
建設関連の訓練を実施した際の訓練経費一部、また建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。男性だけでなく、女性作業員も対象であり、多くの従業員に専門的な知識を学んでもらうための助成制度として活用されています。
2.1概要
「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」は対象となる年齢や性別、ジャンルによっていくつかのコースにわけられており、事業の内容や学びたい内容によって適したコースを選択できるようになっています。
対象企業
- 建設業かつ雇用保険適合事業所
- 資本金若しくは出資総額3億円以下または常時使用労働者数300人以下
対象者
・雇用保険被保険者
※雇用保険料率「16.5/1000」の事業所の雇用保険被保険者が対象となります。
2.2:技能実習
「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」で学ぶ事の出来る技能実習について紹介します。大きくは<技能講習>と<特別教育>の2つに分けられます。
<技能講習>
特定の危険性や有害を伴う労働者を指揮するまたは自身が作業するのに必要な講習
- 玉掛け技能講習
- 小型移動式クレーン運転技能講習
- 高所作業車運転技能講習
- 床上操作式クレーン運転技能講習
- ガス溶接技能講習
<特別教育>
特定の危険性や有害を伴う業務を行う場合に必要な専門的教育
- クレーン運転特別教育
- 高所作業車運転特別教育
- 巻上機運転特別教育
- アーク溶接特別教育
- 足場組立等作業従業者特別教育
- 低圧電気取り扱い業務特別教育
- フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
- 玉掛け特別教育
- 小型車両系建設機械運転特別教育
- 研削と石刃の取替作業特別教育
- 酸素欠乏危険作業特別教育
- 石綿作業従業者特別教育
- 粉塵作業従業者特別教育
2.3助成金額
「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」の助成金額は、雇用保険被保険者数及び受講者の年齢に応じて異なります。
- 雇用保険被保険者が20名以下の場合(①に該当する場合、年齢は問いません)
→経費の75%及び1日1人あたり8,550円 - 雇用保険被保険者が21名以上の場合、受講者が35歳未満
→経費の70%及び1日1人あたり7,600円 - 雇用保険被保険者が21名以上、受講者が35歳以上
→経費の45%及び1日1人あたり7,600円
3:申請から交付まで
「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」の申請~交付までを簡単に確認していきましょう。
- 該当する実習コースを申し込む
- 講習受講
→講習修了事後に助成金申請関連の書類や内容の記載があるメールが送付されます - 請求
→講習を受講した教習センターより受け取った助成金申請関連書類に必要事項を記入の上、添付書類と一緒に受講終了後2か月以内に管轄の労働局またはハローワークに提出 - 支給
→書類等に不備が無ければ指定口座に振り込み
(必要書類については最新の情報を厚生労働省のHPまたは申請先窓口にてご確認ください)
申請にあたっては、受講者の実習日に賃金の支払いがあることが助成金の給付対象条件となります。つまり、受講者が本来のシフトの休日にあたる日に受講した場合、賃金の支払いが無いとみなされ受付が受理されません。
受講する際には従業員へ受講日の確認をおこなうことが大事です。
4:メリット
建設業に関係する多くの技能を学べることで活用される「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」ですが、このコースは企業側にとって魅力となるメリットが沢山あります。
4.1背景
前提として、建設業に勤めている労働者は様々な現場に行くことが多く、その現場ごとに使う資格が異なるなどの理由から、総合的に身に着けておくべきスキルは非常に多くなります。建設業を営む企業が全ての従業員に多くの技能講習を受講させるのは非常に多くの費用が発生し、必要な投資額は膨大です。とはいえ、現在資格を保有している従業員でしか作業ができなくなれば現場作業を断わらなくてはならないリスクもあり、従業員のスキル習得管理は必須と言えます。そんな中で活用できる助成制度は、企業にとって非常にメリットの大きいものであると言えるでしょう。
4.2従業員レベルの向上
「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」を利用する事で見込めるメリットの最も大きなものは、社員の技術が向上することです。社員一人ひとりが技術を学び、知識を身に着ける事で、現場での価値が高まり、生産性がUPします。
企業に所属する従業員のレベルが向上することで、企業としての信頼・実績も保証されることでしょう。
4.3賃金助成
人材育成や教育関連システムの助成金には色々な種類があり、厚生労働省に限らず、自治体が主催するものなど企業向けの制度も多くあります。しかし、基本的には従業員の日額賃金助成のある制度は非常に少なく、“働きながら学べる”という点においてこの「人材開発支援助成金 建設労働者技能実習コース」は非常に魅力的な助成金と言えます。
受講中は現場に出ないのが原則ですから、生産性は期待できません。しかし会社に所属している以上は従業員に賃金を保証する必要がありますから、制度として利用できることで企業側も積極的に受講を促す事が出来るでしょう。
5:まとめ
いかがでしたでしょうか。ここでは、企業が活用したい「人材開発支援助成金」のうち、建設労働者向けの技能実習コースについて紹介しました。
特に都市部では高層ビルの建て直しも増えてきており、建設業界の人材不足なども問題視されています。企業の方は是非、人材育成・人材確保向けの国の助成制度を漏れなく活用してくださいね。