近年、「SDGs」というキーワードがよく聞かれるようになってきました。“持続可能な開発目標”というテーマで、将来に渡って我々人類が継続的に反映していくための目標として定められているものです。

実は、そんなSDGsに関連した補助金・助成制度を厚生労働省が実施している事をご存知でしょうか。ここでは、SDGsに関連する取り組みに対する補助・助成制度として注目されているいくつかの施策について紹介していきます。

1: SDGs関連支援とは?

SDGs関連支援とは

制度に関する詳しい情報に入っていく前に、まずは、SDGsに関する取り組みとはどのようなものかという点について少しだけ触れていきましょう。

1.1SDGsの取り組み

SDGsとは、2015年に国連サミットで決められた国際社会の共通目標です。2030年を目標に、地球を守り、より良いものにしていくための「長期的な開発の指針」として採択されました。

SDGsは、“目標”とされる17の項目と、その目標を達成するための169の“ターゲット”から構成されています。

SDGs目標とターゲット

環境破壊・貧困・教育・平和などの様々なジャンルのテーマで構成されており、国はもちろん、企業単位や個人単位で取り組んでいくべき指標のような位置づけです。メディアでも取り上げられる事が増え、私達の生活の色々なシーンでも見かけるようになりました。

1.2厚生労働省が取り組むSDGs支援

厚生労働省ではSDGsに関連する支援として具体的に次のような施策を行っています。

  • ■障害者の職場定着支援
  • ■仕事と家庭の両立支援
  • ■雇用環境の整備 ・・・等

主に“対企業”の施策が多いですが、企業が前向きな取り組みを行うにあたり国からの支援がある事で、実際に従業員がその恩恵を多くの機会で受けられるようになってきています。

SDGsの概要と、それに対する厚生労働省の取り組みの概要を確認したところで、実際にそれぞれの施策内容を具体的に見ていきましょう。

2:障害者の職場定着支援

障害者の職場定着支援

「障害者職場定着支援奨励金」として実施されている雇用助成金の制度です。事業主の方を対象とした助成制度で、障がい者の方を雇い入れるとともにその業務の遂行に必要な援助・指導を行う職場支援員を配置する取り組みに対して助成金が給付されます。

2.1対象者

対象者:以下①及び②の条件を満たす企業

  • 条件①:いずれかにあてはまる対象労働者を<雇用保険被保険者>として雇い入れること
    (対象労働者:「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」「発達障害者」「難治性疾患のある方」「高次脳機能障害のある方」)
  • 条件②:対象労働者の雇い入れから6カ月以内に<職場支援員>を雇用、業務委託、委嘱のいずれかの契約で配置し、対象労働者の業務支援・指導を担当させること

※職場支援員の詳細については厚生労働省HPに記載があります

2.2支給額

支給される金額は、対象労働者数に応じて6か月ごとに最大2年間(対象労働者が精神障害者の場合は最大3年間)に渡り変動していきます。

対象労働者が短時間労働者以外の場合

  • 中小企業:月額4万円(1人当たり支給額)
  • 中小企業以外:月額3万円(1人当たり支給額)

対象労働者が短時間労働者の場合

  • 中小企業:月額2万円(1人当たり支給額)
  • 中小企業以外:月額1万5千円(1人当たり支給額)

2.3手続き内容

「障害者職場定着支援奨励金」の申請は、事業所を管轄する都道府県労務局またはハローワークが窓口となります。

対象となる事業者(事業主)の条件は詳細に定められており、対象外となる場合の12のケースも一覧化されているので、まずは自社が申請の対象事業者となるかどうか確認を行います。

受給条件が少し複雑な上、受給資格認定申請書の記入が必要となりますが、窓口で問い合わせを行えば担当の方が対応してくれるのでまずは相談してみる所から始めてみましょう。

3:仕事と家庭の両立支援制度

仕事と家庭の両立支援制度

この制度では、厚生労働省から子育て世代に向けて“仕事と家庭での作業両立”をテーマにした産休・育休に特化した支援が行われています。仕事と家庭の両立というテーマに沿って「妊娠・出産」「育児」「介護」の主に3つのテーマに沿って、様々な支援制度が設けられています。

3.1対象者

・仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等

支援対象となる項目が複数存在しているので、それぞれの支援制度の対象となる従業員の条件などは異なります。

各種支援制度の詳細を確認して、支給対象となるかどうかを判断するようにしましょう。

3.2支給額

例えば2022年度の実施条件のうち、「子育てパパ支援助成金」という支援コースでは、男性労働者の出生時育児休業取得の推進や育児休業取得率の上昇に貢献する事で20万円~75万円の支給です。

その他には「介護離職防止」のコースであれば、労働者の円滑な介護休業の取得や職場復帰に取り組み、介護休業を取得した労働者が生じた場合や介護のための柔軟な就労形態の制度の利用が生じた場合等に20万円~36万円が支給されます。

コースにより、対象となる条件や支給額が異なりますので最新情報や支給条件等は必ず確認するようにしましょう。

3.3手続き内容

「仕事と家庭の両立支援制度」に関する問い合わせは、都道府県労働局雇用環境・均等部(労務局)となっています。

制度の詳細や概要、助成金を申請するための「支給申請書」や記載例などは厚生労働省のホームページにて確認・ダウンロードできるようになっています。

4:雇用(職場)環境の整備・改善

雇用(職場)環境の整備・改善

この制度では、職場環境を整備・改善するための施策を推進する企業に対して各種助成金が給付されるようになっています。

代表的なものについていくつか紹介していきましょう。

4.1概要

「職場環境の整備・改善」の為の助成制度では、長時間労働の抑制や労働者の安全・健康の確保など、SDGsで設定されている項目の中でも特に“すべての人に健康と福祉を”“働きがいも経済成長も”といったテーマにマッチした助成制度が複数設定されています。

各種助成金や支援制度があり、企業(事業者)が、自社で推進していきたい施策に合った制度を選択して利用する事が出来ます。

4.2施策例

雇用(職場)環境の整備・改善に関する助成制度には、次のようなものがあります。

長時間労働を抑制したい(各種助成金)

長時間労働を抑制したい

長時間労働の抑制など労働時間等の設定の改善に取り組む中小企業の事業主または、中小企業団体を支援する助成金があります。

労働者の安全・健康を確保したい(各種支援事業)

労働者の安全・健康を確保したい

事業者の行う労働災害防止のための基盤・環境づくりを支援する制度があります。

労働保険への加入・事務手続支援

労働保険への加入・事務手続支援

労働保険の事務手続を外部委託したい場合等に、労働保険事務組合に委託することができるための支援を受けることができます。

従業員の持ち家取得・財産形成支援(勤労者財産形成促進制度)

従業員の持ち家取得・財産形成支援

働く人の計画的な財産づくりを国と事業主が支援する勤労者財産形成促進制度があります。

退職金共済(中小企業退職金共済制度)

退職金共済(中小企業退職金共済制度)

中小企業退職金共済制度を利用すれば、毎月掛金を支払うだけで、従業員の退職金制度を作ることができます。

従業員の処遇や職場環境の改善を図りたい

従業員の処遇や職場環境の改善を図りたい

(1)キャリアアップ助成金

有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成がある制度です。

(2)職場定着支援助成金(個別企業助成コース)

通常の労働者に対し、健康・環境・農林漁業分野などで、雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度)の導入等による雇用管理の改善を行った事業主、介護福祉機器などの導入を行った介護関連事業主に対する助成です。

高年齢者の活用促進のための雇用環境整備

高年齢者の活用促進のための雇用環境整備

(1)高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)

高年齢者の活用を促進するため、新分野への進出、機械設備の導入、雇用管理制度の整備などの取組を行う場合に助成金が受けられます。

介護分野・建設業の雇用管理改善

介護分野・建設業の雇用管理改善

(1)介護

介護分野での人材確保、従業員のスキルアップ、処遇改善などを目指している介護事業者を対象に、さまざまな支援策が行われています。

(2)建設

中小建設事業主や中小建設事業主団体などが雇用管理の改善や建設労働者の技能の向上などを図るための取組を行う場合に、賃金や経費の助成を受けることができます。

障害者の雇用を継続させたい

障害者の雇用を継続させたい

(1)相談・支援機関

地域障害者職業センターは、障害者の職場にジョブコーチを一定期間派遣し、職場定着などの支援を実施しています。

(2)各種助成金

障害者を雇用するために職場の施設・設備などを設置・整備する場合や雇用管理の改善を行う場合などに助成金を受けることができます。

最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業

最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業

(1) 個々の企業の取組に対する助成事業

生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資などにかかった経費の一部が助成される制度です。

(2)業種別団体の取組に対する助成事業

業種別の事業主団体が、業界全体として傘下企業の生産性向上と労働者の賃金引上げを目的とした販路拡大のための市場調査や新たなビジネスモデル開発などの取組を行った際に助成を受けられる制度です。

ポジティブ・アクション(女性労働者の能力発揮促進のための取組)

ポジティブ・アクション(女性労働者の能力発揮促進のための取組)

女性の活躍促進のために、女性の計画的な育成を図る環境整備を進める事業主を支援するための助成金制度です。

5:まとめ

SDGsに関連した補助制度・助成制度について紹介

いかがでしたでしょうか。ここでは、厚生労働省で実施されているSDGsに関連した補助制度・助成制度について紹介しました。あまり公にはされていない、厚生労働省などの国が主導権を持って実施している事業者向けの補助制度や助成金の制度が実は沢山存在しており、是非活用して欲しいものが多くあります。

もちろん、申請のための条件や対象となる事業者などは細かく設定されていますので、制度を利用する際には必ず指定の窓口で最新の情報を確認するようにしましょう。

大手だけではなく、中小企業もSDGsに配慮した取り組みが推進されていくように、是非多くの制度を有効に活用してくださいね。