中小企業の生産性向上に寄与する設備投資などについて、国から補助金が出ることをご存じですか?

日本の中小企業は「人手不足」「働き方改革」「賃上げ」など、様々な経営課題を抱えています。これらの経営課題に加え、「コロナ不況」や「インボイス導入」などの時代に応じた様々な対応が求められています。ここでは、そんな山積みの課題を解決するための企業の「生産性向上」に向けた取り組みに活用できる補助金について紹介します。

1:中小企業生産性革命推進事業の概要

中小企業生産性革命推進事業の概要

今回紹介するのは「中小企業生産性革命推進事業」です。

先に挙げたような、中小企業が抱える様々な課題を、4つの補助金で支援してくれます。

4つの補助金は以下の通りです。

  • ■ものづくり補助金
  • ■持続化補助金
  • ■IT導入補助金
  • ■事業承継・引継ぎ補助金

「中小企業生産性革命推進事業」の特徴として、公募が通年で行われている点が挙げられます。通常の補助事業は公募期間が年度で区切られており、事業期間も限られていることが大半です。そのため、限られた事業期間で事業を完了させなくてはならず、成果を上げるための十分な期間が確保できないことが課題となっていました。

しかし、公募が通年で行われることにより、事業期間が十分に確保できるため活用の幅が広がったのです。

それでは、各補助金について順番に概要を確認していきましょう。

2:ものづくり補助金

ものづくり補助金

「ものづくり補助金」は、中小企業が経営革新のための設備投資に使うことができる補助金です。

補助上限額は750万円〜5,000万円となっており、補助率は1/2もしくは2/3と定められています。

  • 「通常枠」
  • 「回復型賃上げ・雇用拡大枠」
  • 「デジタル枠」
  • 「グリーン枠」
  • 「グローバル市場開拓枠」

といったいくつかの枠があり、それぞれに上限額と補助率が設定されています。

また、3〜5年で大幅な賃上げに取り組む事業者に対しては、補助上限額を100〜1,000万円を上乗せする特例もあります。

<対象経費>

  • ・機械装置・システム構築費
  • ・専門家経費
  • ・クラウドサービス利用費
  • ・原材料費
  • ・外注費 など

ものづくり補助金は補助上限額も高く、対象経費も幅広いことから活用の裾野は広いのではないでしょうか。

設備投資や賃上げなどを予定している場合には、ぜひ活用を検討してみてください。

3:持続化補助金

持続化補助金

「持続化補助金」は、小規模事業者等が経営計画を自ら策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓に対して受け取ることができる補助金です。

補助上限額は50万円〜200万円となっており、補助率は2/3と定められています。

また、免税事業者からインボイス発行事業者に転換する場合は、さらに50万円の補助上限額上乗せを受けることができます。

  • 「通常枠」
  • 「賃金引上げ枠」
  • 「卒業枠」
  • 「後継者支援枠」
  • 「創業枠」
  • 「インボイス枠」

これらの申請枠が設定されており、いずれか1枠のみ申請が可能です。

<対象経費>

  • ・店舗改装費
  • ・広告掲載
  • ・展示会出展費用 など

WEB広告なども対象経費になっている上に補助率も2/3と高いため、非常に使い勝手の良い補助金と言えるのではないでしょうか。

また、インボイス発行事業者に転換する際には、補助上限額の上乗せが受けられるため、2023年度中にインボイス発行事業者になるのであれば、この補助金を活用してみるのも有効ではないでしょうか。

4:IT導入補助金

IT導入補助金

「IT導入補助金」は、中小企業等が行う業務の効率化や新たな顧客獲得等の付加価値向上に資するITツールの導入に対して受け取ることができる補助金です。

補助上限額は5万円〜450万円と幅が広く、補助を受ける枠によって大きく異なります。

補助率についても1/2、2/3、3/4と枠によりそれぞれ異なります。

  • 「通常枠」
  • 「デジタル化基盤導入枠」
  • 「セキュリティ対策推進枠」

これらの枠が設定されており、それぞれ対象となる経費が異なります。

まず、「通常枠」と「デジタル化基盤導入枠」では、

  • ・ソフトウェア費
  • ・クラウド利用料
  • ・導入関連費

などが対象経費となり、勤怠管理ツールや販売管理システムの導入にかかる費用の一部に対して補助が受けられます。

さらに「デジタル化基盤導入枠」においては前出の経費のほか、ハードウェア購入費も対象となり、PCやタブレットなどの購入には最大10万円、レジや券売機の購入には最大20万円の補助が受けられます。

「セキュリティ対策推進枠」では、サイバーセキュリティサービスの利用料が対象経費となります。

なお、申請にあたっては<IT導入支援事業者>の選定が必要となります。

<IT導入支援事業者>とは、中小企業の生産性向上のために、ITツールの提案・導入及び経営診断ツールを利用した事業計画の策定の支援をはじめとした各種申請等の手続きのサポートを行ってくれる事業者のことを指します。

なお、IT導入支援事業者が事務局に登録して認定を受けたITツールのみが、IT導入補助金の補助対象となる点に注意が必要です。

お近くのIT導入支援事業者については、以下のHPにて最新情報をお調べください。
https://it-shien.smrj.go.jp/

5:事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金

「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継やM&A時の経営革新や専門家活用に対して受給することのできる補助金です。

  • ・経営革新
  • ・専門家活用
  • ・廃業・再チャレンジ

上記3種類の補助金から構成されており、「経営革新」と「専門家活用」は上限600万円、「廃業・再チャレンジ」は上限150万円と、それぞれ補助上限額が異なります。

<対象経費>

  • ・設備投資や販路開拓にかかる費用
  • ・M&A時の専門家活用にかかる費用
  • ・物件の原状回復や在庫処分にかかる費用

事業を継続させていくため、事業承継は避けては通れません。しかし中小企業では企業内に事業承継のノウハウがない場合がほとんどです。

そこで、この補助金を活用して知識のある専門家に相談し、設備投資や販路開拓を行うことで円滑な事業承継を行うことが可能となります。

なお、本補助金の申請にあたっては、「認定経営革新等支援機関」と呼ばれる支援機関への相談が必要です。

「認定経営革新等支援機関」とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた商工会や金融機関、税理士法人等を指します。

上記の支援機関に相談することで、これまで自社では見えていなかった課題や、自社が持つ強みと弱みを知ることができ、今後の経営をより良くすることが期待できます。

お近くの支援機関は、中小企業庁の認定経営革新等支援機関のHPから確認することができます。

(中小企業庁―認定経営革新等支援機関)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/index.htm#jigyousha

6:まとめ

中小企業生産性革命推進事業

いかがでしたでしょうか。ここでは、中小企業が行う生産性向上のための取り組みに対して給付される「中小企業生産性革命推進事業」の概要について紹介しました。

お伝えしてきたとおり、中小企業が事業を存続させていくためには生産性の向上が不可欠です。

しかし、多くの中小企業では内部だけでは生産性向上のノウハウが十分ではないケースが多く、「生産性向上のために何か取り組みを行いたいが、どうすればよいのかわからない」という企業が大半です。

特にそういった“新たな取り組み”には現状からの変化もあり、初期投資も発生するためにリスクを大きく感じがちなので、なかなか一歩先に進めないという悩みを抱えるケースも多いのが現状です。

今回ご紹介した4つの補助金はそんな中小企業の悩みを解決するために創出されたものです。ITの導入や新規の販路開拓などについて、補助金を活用してリスクを低減させた上で、生産性の向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※本記事の情報は執筆時点(2023年2月現在)の情報です。申請時には最新情報をお調べください。