出生率の低下や平均寿命の延伸で少子高齢化が進む日本は、現在65歳以上の高齢者が29.1%(2022年9月15日 総務省統計局より)と年々拡大傾向にあります。そのようななか、「介護」は日本にとって重要な取組みであり、今後も需要が高まる事業です。国としても人材不足が深刻な「介護」は様々な補助金制度や助成金制度を実施しています。

今回の記事では、介護事業主が活用できる補助金・助成金制度を詳しくご紹介するので、介護事業に携わる方や、これから携わろうとしている方は、ご参考にしてみてください。

介護事業の概要

介護事業は、介護保険法に基づく全26種類54サービスを提供する事業のことを指します。これらは、高齢となり、要介護や要支援に認定となった方が受けられるサービスで、介護保険が利用できるサービスです。介護事業を大きく分けると、6つの分類ができます。

介護事業の種類 具体例
介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成 居宅介護支援
自宅で受けられる家事援助等のサービス 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護
施設などに出かけて日帰りで行うサービス 通所介護(デイサービス)、通所リハビリ、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護
施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス (短期期間の生活)
短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
(長期間の生活)
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
福祉用具の利用にかかるサービス 福祉用具貸与、特定福祉用具販売

介護事業主で活用できる補助金・助成金の種類

介護事業主が活用できる補助金・助成金を見ていきましょう(※令和4年1月8日執筆時点)。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、労働局が実施している助成金で、非正規雇用の労働者を正社員化や給料水準の見直しを実施した事業主に対して助成する制度です。正社員化支援に関するコースと処遇改善支援に関するコースの大きく2つに分かれており、その概要を紹介いたします。

○正社員化コース

有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用した場合に助成金が交付されます。

実施内容 支給額
有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換または直接雇用 570,000円(1人当たり)
最大20人まで
有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換または直接雇用 285,000円(1人当たり)
最大20人まで

※支給額は、母子家庭等の労働者を雇用した場合や派遣労働者を雇用した場合、生産性の向上が認められる場合等、支給額の加算措置もあります。

○賃金規程等改定コース

有期雇用労働者等の基本給の賃金規程等を2%以上増額改定し、昇給した場合に助成金が交付されます

実施内容 支給額
対象となる労働者数が1~5人の場合 32,000円(1人当たり)
最大100人まで
対象となる労働者数が6人以上の場合 28,500円(1人当たり)
最大100人まで

※支給額は、増額率3パーセント以上にした場合や生産性の向上が認められる場合等、支給額の加算措置もあります。

○この他にも、有期雇用労働者に新しく賞与・退職金制度を設けた場合や、有期雇用労働者と正規雇用労働者の賃金規程を共通の職務に応じたもので新たに作成した場合等にも助成金が交付されます。

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、労働局が実施している助成金で、子育てと仕事の両立や介護休業等を取得しやすい環境整備をした場合に助成金が交付される制度です。

○出生時両立支援コース

男性の労働者が育児休業を取得しやすい環境整備をしたうえで、実際に育児休業を5日以上取得した場合、助成金が交付されます。

□支給額:20万円

※男性労働者の育児休業取得率が30%以上向上した場合や生産性の向上が認められる場合等は支給額が増額します。

○介護離職防止支援コース

「介護支援プラン」を作成し、プラン通りに介護休業の取得や職場復帰に取り組んだ場合、助成金が交付されます。

実施内容 支給額
介護休業 休業取得時 285,000円
職場復帰時 285,000円
介護両立支援制度
※介護と仕事が両立できる制度を構築したうえで、その制度を実際に利用した際に助成金が交付される。
285,000円

※支給額は、生産性の向上が認められる場合は支給額が増額します。

○この他にも、育児休業の取得促進や不妊治療を応援するための環境整備等にも助成金が交付されます。

ICT導入支援事業

ICT機器の導入をすることで、介護現場の負担軽減を図ることを目的とした補助金制度です。こちらは、都道府県が実施しており、補助金の名称も内容も都道府県ごとに若干違います。今回は東京都が実施した令和4年の内容を紹介します。東京都ではICT導入支援事業という名称ではなく、デジタル機器導入促進事業となっています。お住まいが東京都でない場合は、お住まいの都道府県のホームページをチェックしてみてください。

※東京都が実施しているデジタル機器導入促進事業(ICT導入支援事業)の令和4年度実施分は〆切が過ぎており、現在は申請できません。

○令和4年度デジタル機器導入促進事業(東京都)

介護事業所が負担軽減に資するデジタル機器を導入する場合に、経費に対して補助金が交付されます。

対象となるもの 補助金額
➀ソフトウェアやクラウドサービス
(購入費、リース料、保守・サポート、導入設定費等)
②タブレット端末・スマートフォン等のハードウェア
(購入費、リース料、保守・サポート、導入設定費等)
③Wi-Fiルーター等のネットワーク機器
(購入費、設置費)
④他業者からの照会等に応じた経費
(説明資料印刷代)

補助金の上限額は下記のとおりです。職員数によって金額が異なりのます。

職員数1~10人:100万円
職員数11~20人:160万円
職員数21~30人:200万円
職員数31人以上:260万円

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)は、労働局が実施している助成金で、介護機器の導入を通じて、離職率の低下の取組に対して助成する制度です。

助成対象費用 支給額
介護福祉機器の導入費用(利子を含む) 左記の合計額の20%
(生産性要件を満たした場合は35%)
(上限150万円)
保守契約費
機器の使用を徹底させるための研修

また、助成金の要件として、離職率を目標値以上に低下させる必要があります。離職率の目標値は職員数によって異なります。詳細は、下記の厚生労働省のホームページをご覧ください。

その他

介護事業主が活用できる補助金・助成金は、今回紹介したほかにも、都道府県や市町村、団体等が独自に実施しているものもあります。お住まいの都道府県や市町村等のホームページで情報が掲載されているので、ご確認ください。

まとめ

今回は、介護事業主が活用できる補助金・助成金について紹介しました。少子高齢化が進む日本にとって「介護」の重要性はますます高くなっています。国としても今後様々な補助金制度をつくり、介護の業界を支援し続けていくものと考えられます。補助金や助成金を上手く活用して、介護事業の推進に活かしてみてください。