労働生産性の向上のため、日本の企業には人や設備への投資が求められています。日本の労働生産性は、OECD38カ国中27位と過去最低であり、労働時間が長い割には成果が少ない働き方になってしまっています。その結果、DX(デジタルトランスフォーメーション)やIT化など、企業のITへの投資による労働生産性改善の動きも活発化しており、IT環境の改善などを推進する目的で活用できる補助金や助成金に注目が集まっています。
そこで今回の記事では、パソコンを購入できる補助金・助成金制度をご紹介します。IT環境の改善というと難しく聞こえますが、例えば、IT導入補助金は多くの利用機会がある補助金です。このほか、定期的に入れ替えするパソコンや仕事で活用する機会が増えているスマホやタブレットでも使える補助金や助成金制度をご紹介するので、参考にしてみてください。
目次
1 IT導入補助金とは
IT設備投資に活用できる補助金の代表な制度が「IT導入補助金」です。IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者などが自社の課題やニーズに合致したITツールの導入を支援する補助金になります。事業者が導入するITツールにかかる経費の一部について補助金が支給されます。
1-1 IT化のメリット
IT化のメリットは、幅広く労働生産性の改善を期待できる点です。以下、代表的な3つの事例を紹介します。
RPAツールを活用による手動定型業務の自動化 | RPAツールとは、ロボットによる手動定型業務を自動化するためのツールになります。今までは人がやらなければいけなかった定型の業務を自動化することで、正確性を担保しながら作業にかかる人の手を大幅に削減することができます。 |
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顧客管理システムによる売上増や顧客満足の向上 | 顧客管理(CRM)や営業支援(SFA)などのツールを活用することで見込み管理や顧客の購買情報などが組織全体で“見える化“が可能です。営業マンなどの個人の勘などに頼らずに組織での情報共有やノウハウの蓄積によって売上増加や顧客満足の向上に取り組みができます。 |
テレワークやWeb会議など働き方改革の促進 | 自宅や外出先から仕事ができるテレワーク環境や、移動が必要ないWeb会議や商談のためのITツールを導入することで、安心かつ効率的な働き方や労働環境の整備ができます。 |
1-2 ITツールとは
IT導入補助金が支給される対象は、ITツールに限定されています。IT補助金の支給対象となるITツールには何があるのか、確認しておく必要があります。
IT導入補助金の対象となるITツールは、業務効率化のために新しく導入する『ソフトウェア製品』と『クラウドサービス』などになります。ソフトウェア製品やクラウドサービスを導入するために必要となる保守サポートや初期導入費用もITツールに該当して補助の対象となります。
ソフトウェア製品やクラウドサービスは世の中に多数ありますが、全てがIT導入補助金の対象ではありません。IT導入支援事業者*によって登録されたソフトウェア製品やクラウドサービスが対象となります。
1-3 IT導入補助金2022とは
IT導入補助金は、何度かの変更が行われています。直近では『IT導入補助金2022』が最新の制度になっています。2023年にはIT導入補助金2023が新しい制度として活用される可能性が高いです。
IT導入補助金2022は、4つの類型に分けられており、それぞれ補助金の枠や補助率が異なってきます。
類型枠 | 補助金の下限額〜上限額 | 補助率 |
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通常枠 | A類型:30万〜150万円未満 B類型:150万〜450万円以下 |
1/2位内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万〜100万円 | 1/2以内 |
デジタル化基盤導入枠 | 5万〜350万円 | 5万〜50万円以下は3/4以内 50万円超〜350万円は2/3以内 |
複数社連携IT導入類型 | 5万〜3,000万円* | 金額や経費内容によって異なる* |
*5万〜350万円が基盤導入経費となり、50万円までは補助率3/4で、50万円超は補助率2/3になります。350万円超は消費動向等分析経費になります。これらの補助金枠とは別に補助事業者が参画事業者を取りまとめに要する費用が上限200万円となります。
2 パソコンやスマホ・タブレット導入に補助金や助成金は活用できる?
ソフトウェア製品がITツールとして認められているため、パソコンやスマホやタブレットの購入費用は補助対象となっています。
その他のソフトウェア製品として、プリンターやスキャナーや複合機器なども補助対象となっています。一方で、キーボードやマウスなど本体と分離する機器は補助対象外となっています。
2-1 以前はレンタルのみが補助対象
IT導入補助金2022の制度が開始されるまでは、パソコンなどのハードウェアはレンタルのみが補助の対象となっていました。さらに、ハードウェア単体のレンタルを導入する場合には対象外で、機能拡張のためのITツールなどと合わせることで補助対象となっていました。
一方、IT導入補助金2022のパソコンやスマホやタブレットの単体での導入かつ購入費用も補助対象となっている点が大きな利点です。
2-2 IT導入補助金2022ではレンタルは補助対象外
IT導入補助金2022では、これまで補助対象となっていたパソコンなどのハードウェアのレンタルは補助の対象外になる点に注意が必要です。これまで申請できた制度でも、補助の対象にならないケースもあるため、最新情報をきちんと確認するようにしましょう。
3 このほか活用できる補助金・助成金制度
このほか、パソコンやスマホやタブレットなどの購入費用について補助が受けられる制度は以下の通りです。
3-1 テレワーク推進助成金/テレワーク導入支援補助金
新型コロナウイルス感染症対策として一気に進められたテレワークについて推進することを目的とする助成金はまだまだ活用が可能です。導入支援補助金もテレワークの促進を目的とした補助金になります。
テレワーク推進助成金やテレワーク導入支援補助金は、各都道府県などの自治体が支援している制度になります。対象は中小企業や個人事業主になり、基本的にはテレワークを実施する上で必要となるハードウェアとその周辺機器の購入費用が対象になります。助成や補助を受けられる諸条件は各自治体によって異なります。自治体によっては、レンタルなどは対象外になっているので購入前に確認しましょう。
3-2 創業支援事業/創業助成事業
各自治体によってその呼び方は異なりますが、各自治体で創業を支援・助成する制度が活用できます。
創業に関わる支援や助成になるため、パソコンやタブレットなど単体購入の費用でも対象となる制度が多くなっています。ただし、各自治体によってその条件などは異なってくるため、事前に確認しておきましょう。
4 まとめ
IT導入補助金を中心として、パソコンやスマホやタブレットの導入費用を助成や補助してくれる制度を紹介しました。
助成と補助のどちらの制度も申請が受理される手続きが必須になります。継続している助成金や補助金制度でも、内容が変更されることもあるため、申請をスムーズに行えるように事前の確認・相談が大切です。