国や地方自治体が所管する補助金は様々な分野におよぶ上、種類も豊富です。しかし、いざ補助金を貰おうとしても、「役所相手の手続きは、煩雑で難しそうだ」と敬遠してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
補助金を申請するためには、所管する国や地方自治体が定める各種の書類を準備する必要がありますが、そのポイントを押さえてしまえば難しいことはありません。そこでこの記事では、補助金交付の流れに応じた各段階で準備すべき書類を解説しています。国や地方自治体の補助金活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1 補助金とは
補助金は、定められた目的や要件を満たす場合に、国や地方自治体から交付される金銭です。具体的には、補助金の申請者が行う事業が、補助金の定められた目的や要件に適合する場合に、補助金が交付されることになります。補助金は、補助金の申請者が行う事業に対して交付されることから、この補助金の申請者が行う事業を「補助対象事業」といいます。
補助金は、原則として返還する必要がない制度であるため、申請期限や提出書類などが細かく定められています。
1-1 補助金交付の流れ
補助金の交付は、一般的に以下のような手順になります。
①申請 | 所轄行政庁に、補助金の交付申請を行います。交付申請では、申請書とともに定められた必要書類も提出します。 |
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②審査 | 提出された申請内容に基づき、所轄行政庁が審査を行います。 |
③交付決定 | 審査で合格した申請案件に対し、所轄行政庁が補助金の交付を決定します。 |
④事業実施 | 補助金の交付が決定したら、申請者が補助対象事業を実施します。 |
⑤実績報告 | 補助対象事業が完了したら、申請者が補助対象事業の実績報告を行います。 |
⑥検査 | 提出された実績報告書に基づき、所轄行政庁が検査を行います。 |
⑦交付確定 | 検査に合格したら、所轄行政庁が補助金の交付確定を行います。 |
⑧請求 | 補助金の交付が確定したら、申請者が補助金の交付を請求します。 |
⑨払込 | 提出された補助金交付請求書に基づき、所轄行政庁が補助金を払い込みます。 |
上記の手順は、「清算払い」といわれる補助金交付の流れで、補助金は補助対象事業が完了した後に払い込まれます。それに対し、補助金が補助対象事業の完了する前に払い込まれる「概算払い」もあります。
2 補助金申請に必要な書類
それでは、補助金を申請するためにはどのような書類が必要なのか、具体的にみていきましょう。なお、ここでは一般的に必要となる書類を紹介していますが、実際の補助金申請にあたっては、所轄の行政庁に問い合わせて確認することが必要です。
2-1 補助金申請時に必要な書類
補助金申請時に必要な書類は、次の通りです。
①補助金交付申請書
補助金の交付を願い出る書類です。補助金交付申請書は、所轄行政庁で様式が定められており、補助対象事業の目的や概要を簡潔明瞭に記載するようになっています。
補助対象事業の目的や概要は、最も重要な項目です。これにより、申請する案件が補助制度の目的に合致しているか、案件の内容がどのようなものかなどが端的に把握できるからです。このため、所轄行政庁の審査員が案件の目的や概要を一目見て理解できるように、わかりやすい文章表現で作成することが重要です。
補助金は、案件の内容が制度の目的や要件に適合していても、必ず貰えるというものではありません。補助金には、支給予定件数や支給予定金額という予算上の制約があるため、審査で評価が上位の案件から交付が決定されます。このため、補助要件には適合していても、下位の評価しか貰えなかった案件は、支給対象から外れてしまう可能性があります。
このことから、申請案件の内容を行政庁の審査員によく理解してもらうためにも、目的や概要が一目見て理解できるように、わかりやすい申請書にすることが重要なのです。
②事業計画書
事業計画書は、補助対象事業の計画や内容を説明する書類です。この事業計画書は、補助金交付申請書に記載した案件の目的や概要をさらに掘り下げて詳しく説明する資料であるため、申請書と並んで非常に重要な書類です。
事業計画書は、
- ・事業の目的・設計内容
- ・事業を行う必要性
- ・事業を行う効果
- ・必要な設備や人員
- ・必要な設備や人員を賄うための必要な資金額
- ・事業を成功させるための社会的なニーズや市場調査
などについて、詳しく説明することが大切です。
また、説明を裏付けるための見積書なども添付します。
③スケジュール表
スケジュール表は、補助対象事業の開始から完了までのスケジュールを説明する資料です。
例えば、ラーメン店を開業しようとする人が、地方自治体の起業家補助金を申請しようとする場合は、補助対象事業(案件)は「ラーメン店の開業」となり、
- ・食材の仕入れ先決定・契約
- ・店舗物件の賃借契約
- ・店舗内・外装工事施工
- ・厨房機器など備品購入・搬入
- ・アルバイトの面接・採用
- ・アルバイトの教育
- ・宣伝広告
- ・消耗品購入・搬入、開店準備
などの各作業について、時期を設定してスケジュールに落とし込みます。
④資金計画書
資金計画書は、事業を遂行するための資金をどのように調達し、どう返済していくかを説明する書類です。資金計画書には、
- ・必要な資金総額とその積算内訳
- ・交付を受けたい補助金額
- ・自己資金額
- ・金融機関から融資を受ける予定の金額
そのうち、
などを記載します。
また、融資を受ける場合の返済は、資金的に無理のない現実的な返済計画を立てて説明する必要があります。
2-2 事業完了後に必要な書類
補助対象事業完了後には、実績報告書が必要です。
①実績報告書
実績報告書とは、補助対象事業を実施したことを説明する書類です。所轄行政庁では、提出された実績報告書に基づき、補助金検査を実施します。このため、実績報告書は、補助金検査を通過できるように作成する必要があります。すなわち、実績報告書では、補助対象事業を実施したことだけでなく、
- ・補助金の目的や交付要件から逸脱せずに事業を遂行・完了したこと
- ・当初提出した事業計画書の内容の通りに事業を遂行・完了したこと
を説明し、検査員に理解してもらう必要があります。
また、補助金を所定の経費に使用したことを証明するため、実績報告書には、経費執行の内容がわかる資料や領収書・請求書、契約書などの証拠書類も添付しておきます。
なお、事業の実施内容が、当初提出した事業計画書の内容と食い違っている場合、その点について説明を求められ、未実施事業があればそれに対応する補助金額が減額されることもあります(概算払い補助金の場合は、返還になる可能性があります)。
本来は、事業の実施内容が当初提出した事業計画書と違ってくる場合は、事業開始前または事業実施途中の段階で、事業計画の変更届を提出し、審査を経て補助金交付の変更決定を受ける必要があります。
2-3 補助金請求時に必要な書類
補助金請求時には、補助金交付請求書が必要です。
①補助金交付請求書
補助金交付請求書は、補助金の交付を請求する書類ですが、所轄行政庁の指定様式を使用します。記載事項は、払い込んでもらう補助金額、および振込先の金融機関と口座情報になります。
3 まとめ
補助金申請時に必要な書類には、①補助金交付申請書、②事業計画書、③スケジュール表、④資金計画書があり、補助対象事業完了後には、⑤実績報告書、補助金請求時には、⑥補助金交付請求書が必要です。
中でも①補助金交付申請書や②事業計画書は、補助対象事業の目的や必要性を説明することがポイントになるほか、⑤実績報告書は、補助対象事業が問題なく完了したことを説明し、補助金検査を通過することが重要なので、事前にしっかりと準備しておきましょう。