戸建て住宅の方などで太陽光発電・蓄電池の設置を検討している方向けの補助金をご存知でしょうか。既に自宅に太陽光発電施設をお持ちであれば、家庭用蓄電池を導入することで更に電気代を節約しながら低炭素社会の実現に貢献することができます。
太陽光発電システム(ソーラーパネル等)はあっても、蓄電池は高額なため導入を見送ったという場合でも、補助金をうまく活用すれば初期費用を抑えることができます。
ここでは、家庭用の蓄電池を導入する際に活用できる補助金を紹介します。
目次
1:DERとは
DERは「Distributed Energy Resources」の頭文字を取ったもので、“分散された電力供給源”という意味があります。ここでは主に、家庭や企業に設置されている太陽光発電システム等を指しDERと呼んでいます。
まずはDERの役割や期待される効果を確認しましょう。
1.1DERによる効果
DERは主な電力消費地である各家庭や企業に設置されているため、大規模な送電網が不要で、送電による電力のロスを最小限に抑えます。
また、災害時に公共ライフラインの電力供給が途絶えた場合でも、各家庭に対して電力の供給が継続しやすくなります。
送電網を整備しにくい離島で活用できるという点も大きなメリットです。
1.2蓄電池の重要な役割
一般的に太陽光発電施設の発電ピークはお昼の12時頃ですが、電力需要のピークは夕方の17時〜19時頃であり、需要と供給の時間帯にズレが生じます。
蓄電池がなければ需要を上回って発電された電力は消費されずに無駄になってしまいますが、日中に発電された電力を一度蓄電池に充電(蓄電)し、それを夕方の時間帯の利用電力に充てることで、発電された電気を無駄にせず有効活用することができます。
1.3DER導入が補助される理由
家庭で使用するサイズの蓄電池は設置費用を含めると200万円以上かかる場合もあり、非常に高額です。
そのため、国は一般社団法人環境共創イニシアチブ(Sii)を窓口とし、蓄電池を普及させるために補助金を用意しています。令和4年度の補助金の申請受付は終了していますが、国の概算要求の内容から、令和5年度も引き続き補助金制度の継続が見込まれます。
細かな点は変更される可能性がありますので、令和5年度の制度の詳細は最新情報を確認するようにしてください。
1.4DER実証事業
電力需給の全体最適化を図るために、DERの実証事業が実施されます。これは、発電量が多い時間帯は蓄電池に充電し、電力需要が増える時間帯に蓄電池を放電してシステム全体で需要と供給のバランスを図ろうというものです。
2:DER補助金を活用した蓄電池の導入
蓄電池の導入に伴い補助金を受け取るためにはいくつかの条件があり、補助金の対象外となってしまう蓄電池の種類もありますので、制度の概要をしっかりと理解しましょう。
2.1補助金の対象
補助金の対象となるためには、
- HEMS
- 蓄電池
- 太陽光発電設備
これら3つが揃っている必要があります。
太陽光発電設備が設置済みの場合は、蓄電池の購入・設置にかかる費用が補助金の対象となり、未設置の場合は太陽光発電設備と蓄電池を同時に設置すれば補助金の対象となります。
蓄電池はSiiに登録済みの製品のみが、補助金の対象となります。
2.2補助金額
補助金額は初期実行容量に応じて決められており、令和4年度は3.7万円/kWhとなっています。ただし、蓄電池の購入費用と設置費用の1/3以内が上限です。
HEMSの導入には一般的に10~20万円の費用がかかりますが、一律5万円の補助があります。
2.3申請方法
補助金は、蓄電池を設置する個人が個別に申請するのではなく、各設備を直接管理、制御するリソースアグリゲーターと呼ばれる業者がまとめて申請を代行します。このリソースアグリゲーターに、交付申請書をはじめとした7種類以上の書類を提出する必要があります。
もちろん、必要書類は連携する業者に確認することができますので安心です。
2.4申請スケジュール
家庭用蓄電池に関する補助金の公募期間は6月から12月となっていますが、予算額と応募状況によっては早期に締め切られる場合があります。
実は、令和4年度はたった2日間で予算満了のため応募が終了しました。令和4年時点で申請が叶わなかった方が次の申請タイミングをチェックしている可能性もありますので、令和5年度の申請に向けて早めに業者と連携して準備しておくことをおすすめします。
申請後は1〜2ヶ月で交付金額が決定されます。
3:蓄電池の導入でDER補助金を受けるために必要なもの
せっかくこのような補助金の仕組みがあるのであれば、家庭に蓄電池を導入する際には補助金を活用して初期費用を抑えたいところですよね。では、実際に補助金を受けるために必要なものを具体的に確認していきましょう。
3.1HEMSの導入
DERを活用するためには、家庭の電力全体を制御するHEMSというシステムを導入する必要があります。
HEMSは、“家庭内のどの設備がどの程度の電力を消費しているか”という情報を一元的に管理するシステムで、電力の使用状況を「見える化」することができます。
3.2スペース
HEMSは20~30㎝程度のモニターで、稼働には電源が必要です。
蓄電池の大きさはおおむね幅約50㎝×厚み約30㎝で、出力によって高さが70㎝~100㎝程度となります。過熱や結露を避けるため、直接日が当たらない風通しが良い場所に設置スペースを確保する必要があります。室内にHEMS、敷地内の適した場所に蓄電池が設置できるスペースを確保するようにしてください。
3.3費用
補助金を受け取る事ができるとは言っても、全ての設置費用が全額無料になる訳ではありません。補助金を受け取るための条件準備に必要なHEMSの導入には10~20万円程度、蓄電池はメーカーや出力容量によって金額が変わりますが、100万円〜250万円程度の費用がかかりますので、導入予算としてこれらを想定しておく必要があります。
3.4実証事業への参加
補助金を受けるためには、実証事業に3年間参加する必要があります。
実証事業は1年で1週間程度の期間で実施されますが、参加すると言っても特にすることはなく、受給の調整をする事業者がHEMSを通して蓄電池の充電/放電を調整することになります。
4:DER補助金申請の注意点
DER補助金を申請する上で、いくつか注意しておきたい点がありますので確認していきましょう。
4.1連系期限
DER補助金を受けるためには、実証事業に参加する必要があります。そのために、定められた期日までに電力供給網への系統連系を完了させる必要があります。
連系期限に遅れると補助対象となりませんので、スケジュールをしっかりと確認しておきましょう。補助金の概要が公表された時点で、段階的な計画を立てておく必要があります。
4.2実証事業参加の影響
DER実証事業に参加すると自宅の蓄電池が全体の受給に応じて充電/放電されますので、最も経済的な操作にはならない可能性があります。とはいえ、補助金を受領するメリットのほうが大きいので、この期間は“少しばかり電力のロスが発生する”という認識を持っておくようにしましょう。
また、実証事業の期間中は24時間HEMSをインターネットに接続する必要があり、蓄電池の設定を変更してはいけません。
4.3自治体による補助金との併用
蓄電池の導入に対しては、独自の補助金や助成金を用意している自治体もあります。
Siiの実施しているDER補助金は、その他「国が実施する補助制度」との併用はできませんが、自治体の制度とは併用することが可能です。
お住まいの自治体で実施されている制度がないか確認しておきましょう。
5:まとめ
これから太陽発電の設置を検討している方も利用できる補助制度ですし、すでに太陽光発電システムを設置されている方も、固定価格買取制度が終了した後に蓄電池を活用することで電力料金を効果的に抑制することができます。
タイミングによっては最新情報が公表前の場合もありますし、申請の期限や予算上限もあるため計画的な準備が必要となりますが、まずは対象の業者に確認するなどして是非補助金を有効に活用してくださいね。