国等から交付される補助金は、その政策に対応して取り組む企業等の経費等が対象となりますが、その補助対象の中にはリース料が含まれることもあります。
そこで今回の記事では、リース料も対象となる補助金を取り上げ、その補助金の分野や例を示すほか、その利用での注意点を解説します。補助対象事業について、資金不足等で応募を躊躇している事業者の方などは参考にしてみてください。
目次
1 リースが利用できる補助金
2022年度の補助金制度では、以下のような分野でリース料が補助対象となっていました。
【省エネ・再エネ関連】
- ESGリース促進事業
- 先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金
- 省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業 等
【海外関連】
- 海外サプライチェーン多元化支援事業
【自動車関連】
- クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
- 低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業 等
【自然災害関連】
- 中小企業等グループ施設等復旧整備補助金(令和4年福島県沖地震) 等
【農業・水産業関連】
- 畜産経営体生産性向上緊急対策事業
- 酪農労働省力化推進施設等緊急整備対策事業
- 水産業競争力強化緊急支援事業 等
【新型コロナ対策関連】
- サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金
- 人材確保等支援助成金
- 事業再構築補助金 等
上記以外にもリース料が補助金の対象となる施策は多いため、自社が検討している対象事業(施策)について確認してみましょう。
1-1 リース料が対象となる補助金の例
ここではリース料が補助金の対象となる具体的な施策を紹介します。
1)事業再構築補助金
●制度概要
同制度は、新型コロナの影響等により厳しい事業環境にある中小企業等の事業再構築を支援するための施策です。新分野展開や事業転換などの思い切った事業再構築に意欲をもつ中小企業等の挑戦を支援する目的で補助金が交付されます。
なお、同補助金では、「通常枠」や「大規模賃金引上枠」など6つのタイプの利用が可能です。
●補助概要[通常枠]
- 補助金額
中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数20人以下】100万円~2,000万円
【従業員数21~50人】100万円~4,000万円
【従業員数51~100人】100万円~6,000万円
【従業員数101人以上】100万円~8,000万円 - 補助率
中小企業者等2/3(6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等1/2(4,000万円を超える部分は1/3)
●補助の対象
以下の経費が対象となっています。
建設費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研究費
なお、補助対象経費は、補助事業実施期間内に補助事業のために支出したことが確認できるものに限定され、リース料も同様です。
●リース料について
機械装置・システム構築費に関して、中小企業等がリース会社に支払うリース料の中から、補助金相当分が減額されることなどを条件として、中小企業とリース会社が共同申請をする場合に、その購入費用に対して、リース会社を対象として補助金の交付が可能となっています。
2)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
●制度概要
この制度は、中小企業等が今後複数年の間に直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など)等に対応するため、中小企業等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
この制度には、「一般型・グローバル展開型」(「通常枠」や「回復型賃上げ・雇用拡大枠」等)と「ビジネスモデル構築型」が用意されています。
●補助概要(一般型 「通常枠」)
- 補助上限
750万円~1,250万円
※従業員規模により補助上限の金額が異なります。 - 補助率
1/2 小規模事業者等2/3
●補助の対象(一般型・グローバル展開型)
対象経費は、「交付決定受けた日付以降に発注を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限る」とされており、以下の費用が対象です。
機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、原材料費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費
●リース料について
機械装置・システム構築費などにおいて、リースやレンタルにかかる経費も補助の対象です。なお、リース等では、交付決定後に契約したことが確認できるもので、補助事業期間中に要する経費だけが対象となります。
なお、契約期間が補助事業期間を超える場合の補助対象経費は、按分等の方式により算出された当該補助事業期間分のみが対象です。
3)ESGリース促進事業
●制度概要
同事業では、環境省の基準を満たす脱炭素機器をリースにより導入した場合に、当初リース契約期間の総リース料(消費税及び再リース料を除く)の4%以下の補助金が指定リース事業者へ交付されます(優良な取組や先進的な取組には上乗せあり)。
●補助の対象
以下の設備等が補助対象です。
熱源設備、エネルギー変換設備、産業用機械(工作機械 等)、建設機械、厨房設備、空調用設備、業務用冷蔵設備、電気自動車等、医療画像機器、分析機器
●リース料について
以下のような要件があります。
- ・環境省が定める基準を満たす脱炭素機器に係る契約である
- ・リース期間中の途中解約又は解除が原則できない契約である
- ・解約可能であるオペレーティングリースを除くリース取引である
- ・リース期間が法定耐用年数の70%以上(10年以上は60%以上)の契約である。ただし、リース期間が3年以上の契約である 等
2 補助金でのリース利用のメリットと注意点
補助金案件でのリース利用のメリットとその注意点を簡単に説明しましょう。
2-1 リース利用のメリット
補助金の交付は、対象の取組が実行された後の支払いとなるため、企業が取組を進めるためには事前の資金確保が必要となります。しかし、予定の経費が多額になれば資金調達が困難になるケースも増えるはずです。
しかし、リース契約により必要な資産を確保できれば、企業は資金面の負担を大幅に軽減させて取組を進めることができます。
2-2 補助金でリースを利用する場合の注意点
補助金でリース利用する際の主なポイントを見ていきましょう。
1)一定期間内が対象となる
リースで機器等を導入する場合、その導入・運用計画期間内に実際に賃借した期間の費用であることが対象の条件となるケースが多いです。
たとえば、「補助金の交付決定から補助事業実施期間は最大10カ月間」などと定められているケースでは、その間のリース料だけが補助の対象となり、それ以外のリース料は補助対象にならないことに注意しましょう。
2)リース会社との共同申請も多い
必要な設備等をリース会社が購入して所有権をもち、取組事業者がそれをリースで利用する場合、補助対象となるには取組事業者とリース会社との共同申請が必要となるケースが多いです。なお、その場合補助金対象のリース料はリース会社に支払われます。
新規の購入資産が対象になるケース、取組事業者のみでリース料を補助対象として申請できないケース、などがある点に注意しましょう。
3)リース料に関する手数料や保険料等は対象外
リース会社が購入した設備等のリース料を構成する手数料、保険料等の経費は補助対象とならないケースが多いです。各補助金で対象となるリース料の内訳は事前に確認する必要があります。
3 まとめ
補助金事業でリース料が利用できれば、企業がその取組を行う場合の資金負担が軽減でき、補助事業を受けやすくなるというメリットがあります。ただし、リース料の支払い対象が補助対象期間に限定されるなど、各施策で様々な制約もあるため、各内容に注意して補助金事業でのリース利用を活用してみてください。