新型コロナの影響で苦しい経営を強いられている事業者は少なくないですが、そのような彼らの支えとなるのが国等からの「補助金」です。補助金のことは、「知っているが活用の仕方がわからない」という方も多いため、今回の記事では、補助金の特徴などを解説していきます。
補助金の内容や新型コロナ関連で利用可能な補助金について知りたい方などは参考にしてみてください。
目次
1 補助金の概要
補助金とは、国や自治体等の政策に対応して実施される企業等の取組を支援するために提供される交付金(返済不要)です。
補助金は、上記の取組にかかる経費の一部を補助するもので、費用の全額が補助されるわけではありません。案件により、補助対象、補助額の上限、補助率などが異なります。なお、補助金の交付は後払いが一般的です。
補助金は申請すれば必ず受給できるものではなく、通常、審査により交付が決定されます。申請の採択や補助額の決定に関する「事前審査」と、取組完了後の内容や結果を確認する「事後審査」が実施され、事後審査に通過した場合に補助金が交付されます。
1-1 補助金の活用ポイント
補助金を事業者等が上手く活用するには、以下のような点の理解が欠かせません。
・補助金の種類や仕組み
補助金は、各省庁や自治体等から数多く提供されており、種類や仕組が各々異なります。補助金を上手く活用するには、それらを把握し自社にマッチしたタイプを選ぶことが重要です。
・申請期間や募集時期
補助金の申請期間も各々異なり、助成金などより短めの傾向が見られます(1カ月程度の申請期間も多い)。また、募集時期が年度を挟む前後の時期(2月~6月など)になるケースが多い点も注意しましょう。
・審査による決定
補助金申請の採択や交付の決定に関して、審査が行われます。計画内容、実際の実行、報告書の提出などにより審査され、その結果により補助金額が決定され交付されるのです。
・補助金は「後払い(精算払い)」
補助金の交付は、事後審査を通過した後の後払いとなりなす。従って、計画した取組に関する必要資金は自社で工面しなければなりません。
1-2 補助金を活用するまでの流れ
補助金を活用するまでの主な流れは以下の通りです。
1)補助金の探索
自社にマッチした補助金を見つけ出します(J-Net21「支援情報ヘッドライン」などを活用)。
2)申請
公募要領などを確認の上、申請書や必要書類を揃えて申請します。
3)申請の審査と採択
申請後に、審査が実施され合格すれば申請が採択されます。
4)事業の実施
採択された申請内容に基づいて取組を実施しなければなりません(補助金の対象経費に関連する領収書や証拠書類は要保管)。
5)補助金の交付
実施した事業内容・経費の報告が必要で、その審査に合格すれば補助金額が確定し、補助金が交付されます。
6)事業後の義務
領収書や証拠書類等は、事業終了後5年間の保管が必要です。また、定期的に事業の状況報告や収益納付が求められることもあります。
2 コロナの影響で使える補助金
新型コロナに関連して利用できる補助金を紹介しましょう。なお、時期により公募が終了しているケースもあるため事前にご確認ください。
2-1 事業再構築補助金
事業再構築補助金は、中小企業等が新分野展開や事業転換等により事業再構築に取り組む場合に交付される補助金ですが、コロナ禍に対応する「緊急対策枠」(特別枠)が創設されました。
主な対象要件は以下の通りです。
- ・2022年1月以降の売上高(または付加価値額)が、2019~2021年同月と比較して10%(付加価値額の場合15%)以上の減少
- ・事業再構築指針に沿った事業計画の策定 等
補助額と補助率は下表のようになっています。
従業員数 | 補助額 | 補助率 |
---|---|---|
25人以下 | 100万円~1,000万円 | 中小企業:3/4 中堅企業:2/3 *補助額の一定部分について異なるケースあり |
26~20人 | 100万円~2,000万円 | |
221~50人 | 100万円~3,000万円 | |
251人以上 | 100万円~4,000万円 |
2-2 小規模事業者持続化補助金
同制度の「低感染リスク型ビジネス枠」は、小規模事業者が経営計画等を作成の上、感染拡大防止のための対人接触機会の減少と事業継続を両立させる、ポストコロナにも対応できる新たなビジネスやサービス、生産プロセスを導入するなどの取組を支援する制度です。
対象者は小規模事業者支援法に基づく「小規模事業者」になります。たとえば、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)は5人以下です。
補助上限額は100万円、補助率は3/4で、感染防止対策費については、補助金総額の1/4(最大25万円)を上限に補助対象経費に計上できます。なお、感染防止対策費のみを対象経費に計上した申請は不可です。
2-3 生産性革命推進事業
新型コロナの影響を受けつつも、生産性向上に取り組む中小企業等を支援するための「生産性革命推進事業」として、以下の補助金が利用できます。
1)ものづくり・商業・サービス補助金
これは新製品・サービス開発や生産プロセス改善等のための設備投資などに利用できる補助金です。
対象者は、中小・小規模事業者などになります。申請類型として、「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」が利用できます。
【通常枠】の補助は以下の通りです。
- 補助上限額:750万円~1,250万円
※補助上限額は従業員規模により異なる - 補助率:中小1/2、小規模・再生事業者2/3
2)持続化補助金<一般型>
この補助金は、小規模事業者等の販路開拓等のための取組を支援するものです。対象者は小規模事業者等で、申請類型として、「通常枠」「特別枠」「インボイス枠」が利用できます。
【通常枠】では、補助上限が50万円、補助率が2/3となっています。
ほかに、ITツール導入による業務効率化等を支援するための「IT導入補助金」と、事業承継・M&A後の経営革新やM&A時の専門家活用等を支援するための「事業承継・引継ぎ補助金」の利用も可能です。
2-4 自治体の補助金
自治体が提供している補助金を2つご紹介します。
1)東京都の「観光業界における経営課題解決促進事業」
同事業は、新型コロナの影響を受けた観光業界の業況改善に向け、業界団体等が実施する、サービスレベルや生産性の向上に向けた取組等を支援します。
支援内容としては、上記の取組に関連する経費の補助で、DX化促進費、機械設備導入費、新サービス・商品開発費、マーケット調査費、人材育成費、広告宣伝費、などが対象です。
補助限度額は1業界団体または1グループにつき、2,000万円で、補助率は補助対象経費の3分の2以内になります。
2)大阪府の「大阪府宿泊施設等の感染症対策対策推進事業」
この事業は、新型コロナの拡大防止対策の強化を図るため、より高度な感染症対策を実施する府内の宿泊施設等を支援します。
対象者は、大阪府内で宿泊施設(ホテル、旅館、簡易宿所)の営業許可を受けた者などです。対象事業としては、共用スペースにおいて実施する、「非接触対応にかかる事業」「換気機能の向上にかかる事業」などが該当します。
補助率は対象経費の1/2以内(通常)です。補助上限額として、宿泊施設については、1事業者につき、200万円。特区、新法民泊施設については、1事業者につき、40万円となっています。
3 まとめ
補助金は行政等の政策に対応して実施される企業等の取組を支援する制度です。補助金には審査や事後の報告などがあり、公募期間が短い等の面がある一方、支給額が多めで企業の資金確保に役立ちます。
国や自治体には様々な補助金が用意されているため、積極的に情報を入手して活用を検討してみてください。