新型コロナや物価高騰などの影響を受け企業等は厳しい状況に直面しています。こうした環境での事業活動を支えるための、補助金・助成金を伴う2023年度の予算が調整段階に入りました。
そこでこの記事では、経済産業省等の概算要求などをもとに、2023年度に活用できそうな主要な補助金・助成金を紹介します。2023年度の中小企業支援策の方向性や補助金・助成金の内容を知りたい方は参考にしてみてください。
目次
1 2023年度の中小企業支援策の方向性
経済産業省と厚生労働省の2023年度概算要求の内容から、補助金・助成金に関連する支援策の概要を確認してきましょう。
●経済産業省
中小企業等への補助金に関連する政策では、「中小企業・小規模事業者等の事業継続支援・生産性向上・転嫁円滑化」に関連した施策が期待されます。
例えば、コロナ禍のため業況が厳しい或は事業再生に取り組む中小企業等を支援する「事業再構築補助金」、中小企業等の設備投資・販路開拓・IT導入を支援する「生産性向上補助金」などが有望です。
また、「データ主導のデジタル社会の実現」「人材」「スタートアップ・イノベーション」などに関連した施策の補助金も期待できるでしょう。
●厚生労働省
助成金に関連する主な重点政策は「成長と分配の好循環に向けた『人への投資』」です。具体的には、企業におけるデジタル人材等の育成の推進に活用できる「人材開発支援助成金」、正社員化の推進に活用できる「キャリアアップ助成金」、在籍型出向を活用したスキルアップ支援に活用できる「産業雇用安定助成金」、などが期待できるでしょう。
2 2023年度での活用が見込まれる補助金・助成金
2023年度に中小企業が利用できそうな補助金・助成金を紹介しましょう(*内容の変更もあるため最新情報は申請前に確認してください)。
2-1 小規模事業者持続化補助金
事業の持続を図るための経営計画に基づいた、小規模事業者等の販路開拓等や業務効率化への取組を支援(経費の補助)するための制度です。なお、この補助金には「一般枠」と「特別枠」(賃金引上げ枠、創業枠、インボイス枠 等)が用意されています。
「一般枠」の主な内容は以下の通りです。
●対象者
常時使用する従業員が20人〔商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は5人〉以下の法人または個人事業主
●支援内容
補助対象は、機械装置等費、広告費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、借料、などの経費になります。
補助率は、概ね2/3以内で、補助上限額は50万円です。
2-2 事業再構築補助金
新型コロナの影響等により厳しい経営を強いられている中小企業等が、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編などにより事業再構築に取り組む場合に支給されます。
「通常枠」「大規模賃金引上枠」「回生・再生応援枠」「最低賃金枠」「グリーン成長枠」「緊急対策枠」のタイプが用意されています。
通常枠の主な内容は以下の通りです。
●対象者
中小企業者等及び中堅企業等
●必須申請要件
- 売上の減少
一定期間での売上高の10%以上の減少 - 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編への取組
- 認定経営革新等支援機関(国の認定を受けた金融機関や税理士等の支援機関)と事業計画を策定
●支援内容
補助対象は、建設費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、などの経費になります。
*経費の必要性及び金額の妥当性を証明できる証拠書類が必要です。
補助額は下表のようになっています。
従業員数 | 補助額 |
---|---|
20人以下 | 100万円~2,000万円 |
21~50人 | 100万円~4,000万円 |
51~100人 | 100万円~6,000万円 |
101人以上 | 100万円~8,000万円 |
補助率は、中小企業者等が2/3(6,000万円超の部分は1/2)、中堅企業等が1/2(4,000万円超の部分は1/3)です。
2-3 新型コロナウイルス対策補助事業
新型コロナ関連で利用が可能な補助金(経済産業省の「生産性革命推進事業」)を紹介しましょう。
1)ものづくり補助金
新製品、サービスや生産プロセス等の改善に必要な設備投資等に支給されます。
【一般型】
- 補助上限:750万円~2,000万円
- 補助率:1/2(小規模・再生事業者は2/3)
【回復型賃上げ・雇用拡大枠】
- 補助上限:750万円~1,250万円
- 補助率:2/3
【デジタル枠】
- 補助上限:750万円~1,250万円
- 補助率:2/3
【グリーン枠】
- 補助上限:1,000万円~2,000万円
- 補助率:2/3
2)IT導入補助金
ITツール導入により実施される業務効率化等が補助対象です。
【通常枠】
- 補助上限:30万円~450万円
- 補助率:1/2
【デジタル化基盤導入枠】
- <ITツール> 補助上限:5万円~350万円 補助率:最大3/4
- <PC等> 補助上限:10万円 補助率:1/2
- <レジ等> 補助上限:20万円 補助率:1/2
3)事業承継・引継ぎ補助
事業承継・引継ぎ後の設備投資等の新しい取組や事業引継ぎ時の専門家活用費用などに補助されます。
- 補助上限:150万円~600万円
- 補助率:1/2~2/3
2-4 人材開発支援助成金
労働者のキャリア形成を促進するため、職務に関連した専門的な知識・技能を修得させるための職業訓練等の実施や教育訓練休暇制度の適用を行った事業主への助成です。
本制度には9つのコースがあり、「人への投資促進コース」では「デジタル人材・高度人材を育成する訓練」などに利用できます。
【人への投資促進コース】
●対象事業者の要件
- ・雇用保険適用事業所の事業主
- ・事業内職業能力開発計画等の作成
- ・職業能力開発推進者の選任 など
●対象労働者の要件
- ・助成金を受けようとする事業所の被保険者
- ・訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上 など
●支援内容
6つのメニューがあり、その内容と助成率は下表の通りです。
メニュー | 内容 | 助成率 |
---|---|---|
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 | 高度デジタル人材の育成のための訓練等への助成 | 75% |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 | IT分野未経験者の即戦力化のための訓練への助成 | 60% |
定額制訓練 | サブスクリプション型の研修サービスによる訓練への助成 | 60% |
自発的職業能力開発訓練 | 労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成 | 45% |
長期教育訓練休暇等制度 | 働きながら訓練を受講するための休暇制度等の導入への助成 | 制度導入経費等に20万円 |
2-5 キャリアアップ助成金
非正規雇用の労働者(有期雇用労働者等)の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善に取り組んだ事業主への助成です。「正社員化支援」(正社員化コース、障害者正社員化コース)と「処遇改善支援」(賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース 等)が用意されています。
●対象事業主(全コース共通)の要件
- ・雇用保険適用事業所の事業主である
- ・キャリアアップ計画を作成し管轄労働局長の受給資格の認定を受ける など
●支援内容
【正社員化コース】(有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換又は直接雇用する)
支給額は、「有期期雇用→正規雇用」の場合、1人当たり57万円です。「無期期雇用→正規雇用」の場合、1人当たり28万5,000円となっています。
*生産性の向上が認められる場合、大企業の場合は別途
加算措置として、「派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合1人当たり28万5,000円」などが用意されています。
3 まとめ
今回は2023年度に利用できそうな補助金等の一部を紹介しましたが、他の省庁や地方公共団体等からも数多く提供されるでしょう。新年度に入る前などに補助金等の情報を集め、活用が可能か検討してみてください。